本記事では、業務改革について、BPRとの違い・メリット・進め方・成功のポイントを踏まえて徹底解説します。また、業務改革プロジェクトでコンサルタントに求められるスキルもお伝えします。業務改革(BPR)とは業務改革とは、企業の業務プロセスや役割分担を根本から見直し、あるべき姿へ再設計する取り組みです。代表的な考え方として、BPR(Business Process Re-engineering/ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)があります。IPAではBPRについて、業務効率や生産性向上のために業務の流れや仕組みを全面的に再構築する業務改革と説明しています。既存業務を前提に「どう効率化するか」を考えるのではなく、業務の目的までさかのぼって再設計することが特徴です。(※詳細はIPA「DX推進のための自社の未来の描き方~業務プロセス・業務主体・組織の未来の描き方編~」を確認してください。)業務改革と業務改善の違い業務改革と業務改善では、見直す範囲と考え方が異なります。業務改善は、現在の業務プロセスを前提として、無駄な手順を減らしたり作業時間を短縮したりする取り組みです。例えば、5段階ある承認を3段階に減らす、手入力していたデータを自動連携するといった施策が該当します。一方、業務改革では「この承認自体が必要なのか」「この業務を現在の部署が担当する必要があるのか」というところから検討します。現在の業務をより良くするのが業務改善、現在の業務そのものを再設計するのが業務改革と整理すると分かりやすいでしょう。業務改革とDXの違い業務改革とDXは密接に関係しますが、同じものではありません。業務改革は、主に業務プロセスや組織の仕組みを見直す取り組みです。一方、DXはデジタル技術やデータを活用し、業務だけでなく製品・サービスやビジネスモデルなども含めて企業を変革する考え方です。そのため、業務改革はDXを実現するための重要な手段の一つと考えられます。注意すべきなのは、ITツールを導入するだけでは業務改革にはならないことです。既存業務をそのままデジタル化すると、不要なプロセスまでシステム上に残る可能性があります。先に「業務をどうあるべき形へ変えるか」を考え、その実現手段としてITを選ぶことが重要です。業務改革が必要とされる背景業務改革が求められる背景には、DXの進展、人手不足、コスト上昇、基幹システムの老朽化などがあります。特にERPや基幹システムを刷新する場面では、現在の業務をそのまま新システムへ移すだけでは、従来の非効率まで引き継いでしまいます。システム刷新を契機として、不要な業務を廃止する重複したプロセスを統合する部門ごとに異なる業務を標準化する手作業をシステム化・自動化する分散しているデータを一元化するといった見直しを行うことで、IT投資を業務全体の変革につなげやすくなります。業務改革を行うメリット業務改革のメリットは、単に一つの作業時間を短縮できることではありません。業務プロセス全体を見直すことで、複数の効果を同時に狙える点にあります。※著者独自作成重要なのは、「システムを入れて工数を減らす」だけを目的にしないことです。業務そのものを統廃合したうえで、人が担当する業務、システム化する業務、外部へ委託する業務を整理することで、改革効果を大きくしやすくなります。業務改革の進め方業務改革では、現状を分析してから改善策を思いつくのではなく、目的→現状→あるべき姿→実行→評価の順で整理することが重要です。実務では、各工程で成果物まで明確にしておくとプロジェクトを進めやすくなります。1.目的・ゴール・対象範囲を設定する最初に「何のために業務改革を行うのか」を決めます。例えば、月間作業時間を削減するリードタイムを短縮する部門間の重複業務をなくすシステム刷新に合わせて業務を標準化するなど、改革後に実現したい状態を具体化します。あわせて対象部門・業務・システムなどのスコープを決めます。ここで目的が曖昧だと、ヒアリングで大量の課題が見つかった結果、何から手を付けるべきか判断できなくなります。実務で整理するもの:改革目的、対象範囲、KPI、プロジェクト体制2.現状の業務プロセスを可視化・分析する次に、現在の業務であるAs-Isを整理します。担当者へのヒアリングや既存資料の確認を行い、業務の流れだけでなく、担当部署、使用システム、入出力データ、処理時間なども確認します。例えば、同じ情報を複数システムへ入力している特定の担当者しか処理方法を知らない承認待ちで長時間止まっているExcelやメールによる手作業が大量に残っているといった状態は、改革対象の候補です。業務フローを可視化する際には、BPMN(Business Process Model and Notation)を利用する方法もあります。BPMNは、業務プロセスを共通の図式で表現するための標準的な表記法です。(※詳細はObject Management Group「Business Process Model & Notation」を確認してください。)実務で整理するもの:As-Is業務フロー、業務一覧、課題一覧、システム関連図3.あるべき業務プロセスを設計する現状を把握したら、あるべき業務であるTo-Beを設計します。この工程では、現在の業務を単に効率化しようと考えるだけではなく、「この業務自体を廃止できないか」「別々に行っている業務を統合できないか」「システムで自動処理できないか」「外部へ委託した方がよい業務ではないか」とゼロベースで検討します。そのうえでAs-IsとTo-Beの差分を整理し、必要なシステム改修、組織変更、教育などの施策へ落とし込みます。すべてを同時に実施するのではなく、効果・緊急度・実現難易度などで優先順位を付けることも重要です。実務で整理するもの:To-Be業務フロー、ギャップ一覧、施策一覧、改革ロードマップ4.新しい業務プロセスを実行・定着させるTo-Beが決まったら、具体的な実行計画へ移ります。システム開発や設定変更だけでなく、業務マニュアルの更新、担当者への教育、テスト運用、移行計画なども必要です。特に注意したいのが、設計上は合理的でも現場で使われないケースです。これまでの役割や仕事の進め方が変わる場合、担当者から不安や反発が生まれることがあります。改革の目的を説明し、必要に応じて現場の意見を取り込みながら定着を進めます。実務で整理するもの:実行計画、移行計画、教育計画、業務マニュアル5.効果を測定して継続的に改善する新しい業務を導入した時点で、業務改革が終わるわけではありません。事前に設定したKPIと実績を比較し、作業時間はどの程度減ったかリードタイムは短縮したかエラーや差し戻しは減ったか新たなボトルネックが発生していないかを確認します。期待した効果が出ていなければ原因を分析し、プロセスを修正します。実務で整理するもの:KPI実績、効果測定結果、追加課題、改善計画このように、業務改革では「As-IsとTo-Beを描くこと」自体が目的ではありません。To-Beを現場へ定着させ、成果が出ているかまで確認するところが重要です。業務改革に活用できる主な手法業務改革では、課題に応じてITや外部リソースなどを組み合わせます。ERPなどのITシステムを活用するERPやSaaS、RPAなどを活用すると、データの一元管理や定型作業の自動化、部門間の情報連携を実現しやすくなります。ただし、現在の業務をそのままシステム化するのではなく、先に不要なプロセスを整理することが重要です。また、ERPを刷新する際は、各部門独自のプロセスをすべてシステムへ作り込む方法だけでなく、標準機能に業務を合わせる「Fit to Standard」の考え方を採用するケースもあります。例えばNTTデータでは、ServiceNowやSAPなどの標準的なソリューションに業務プロセスを合わせる方針のもと、全社的なBPRを実施しています。業務プロセスを標準化したうえでデジタル化・自動化し、システムで対応しない部分を集約してBPO化する取り組みも進めています。(※詳細はNTTデータ「攻めの業務効率化5事例 人手不足は価値創造のチャンス!」を確認してください。)BPOやシェアードサービスを活用するすべての業務を自社で受け持つ必要があるとは限りません。BPO(Business Process Outsourcing)は、特定の業務プロセスを外部の専門事業者へ委託する方法です。一方、シェアードサービスでは、グループ企業などに分散している経理・人事・総務といった共通業務を一つの組織へ集約します。業務を集約する過程で標準化し、重複作業の削減や専門性向上を狙います。例えば、コア業務は社内に残す→ 共通業務は標準化する→ 定型業務はシステム化する→ 外部化できる業務はBPOを検討するというように、業務ごとに適切な実行主体を設計することも業務改革の一部です。BPOの仕組みやBPRとの違い、導入手順をより詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください!▶︎BPOとは?メリット・導入手順・コンサルタントの役割を徹底解説!業務改革を成功させるポイント・注意点業務改革では、優れたTo-Beを作ること以上に、それを実際の組織で実行できるかが重要です。目的を共有し現場を早い段階から巻き込む経営層やプロジェクトチームだけで新しい業務を設計し、完成後に現場へ伝える方法では、実態とのずれや反発が生まれやすくなります。As-Is分析の段階から現場担当者を巻き込み、「現在どこに負担があるのか」「なぜその作業が必要なのか」を確認しましょう。後述するアイガ電子工業の事例でも、DX推進チームだけで全社改革を進めることは難しいと判断し、各事業部から約20名が参加する「デジタル業務改革委員会」を設け、現場との橋渡しを行っています。既存業務を前提とせずゼロベースで考える「現在5人で行っている作業を3人でできないか」と考えるだけでは、部分的な業務改善にとどまりやすくなります。業務改革では、そもそもその作業は必要か→ 必要なら誰が担当すべきか→ 人が行う必要があるか→ 前後の業務と統合できないかという順番で考えることが重要です。システムありきでも、現在の組織ありきでもなく、顧客や事業にとって必要なプロセスから逆算してTo-Beを設計します。段階的に実行し効果検証を続ける大規模な改革ほど、すべてを一度に変更すると現場への負担やプロジェクトリスクが大きくなります。優先度の高い領域から実施し、効果や課題を確認しながら対象を広げる方法も有効です。また、システム稼働を「プロジェクト完了」と捉えず、稼働後の運用状況まで確認します。想定より作業時間が減らない場合や、新しい手作業が発生している場合は、To-Be自体を見直す必要があります。業務改革の事例実際の事例を見ると、業務改革では単一のITツール導入ではなく、業務プロセス・システム・人や組織を合わせて見直していることが分かります。※公式情報を元に著者独自作成ここでは、アイガ電子工業とNTTデータについて詳しく取り上げます。アイガ電子工業では、約20年間利用していた基幹システムの刷新を契機として業務変革を開始しました。その後、CRMによる情報共有、RPAによる自動化、IoTによる設備稼働の可視化などへ取り組みを広げています。社内資料作成や勤怠集計、受発注関連業務などを効率化した結果、全社合計で月およそ300時間の業務時間削減を実現しています。(※詳細はIPA「基幹システム刷新をきっかけに業務を変革──若手主導×現場巻き込みで進めたアイガ電子工業のDX」を確認してください。)一方、NTTデータでは、部門ごとに分断されていた業務やデータを見直し、Fit to Standardの考え方を取り入れて全社的なBPRを実施しています。標準化した業務をデジタル化・自動化し、システムで対応しない業務を集約してBPO化するなど、「業務を整理してから、それぞれに適した実行方法を選ぶ」という業務改革の考え方を確認できる良い事例です。フリーランス向けのDX案件では、BPR・業務改善支援を募集しているケースもあります。案件例や単価を詳しく知りたい方はこちらの記事も参考にしてください!▶︎DX案件の単価は?フリーコンサル・PMO向けに実態や案件例を解説!業務改革では、As-Is/To-Be設計や業務整理だけでなく、システム導入やステークホルダー調整まで求められる案件があります。このような経験を持つ方は、まずはquickflowの案件一覧から、自分の経験に合うBPR・DX案件があるか確認してみましょう。👇下記の案件一覧画像をクリック業務改革プロジェクトでコンサルタントに求められるスキル業務改革では、業務知識だけでなく、複数部門を横断して変革を進める力が求められます。特にITコンサルタントやフリーランスとして案件に参画する場合は、次のスキルが重要です。業務分析・プロセス設計力とITへの理解まず必要なのは、現場の業務を正確に把握し、課題を構造化する力です。担当者へのヒアリング内容をそのまま並べるのではなく、業務フローへ落とし込み、重複・待ち時間・属人化・システム間の分断などを特定します。さらに、To-Beを設計するにはERPやSaaS、RPA、データ連携などについて、「何を実現できるのか」を理解しておく必要があります。重要なのは製品知識そのものではなく、業務上の課題とITの機能を結び付けて考える力です。プロジェクト推進・チェンジマネジメント力業務改革は複数部門の利害がぶつかりやすいプロジェクトです。全社最適では不要な業務でも、担当部門から見れば必要に感じられるケースがあります。また、標準化によって一部の担当者の役割が変わることもあります。そのため、関係者へのヒアリング課題や論点の構造化会議・ワークショップのファシリテーション部門間の合意形成スケジュール・課題管理新業務の教育・定着支援まで含めて推進する力が求められます。業務改革案件では「正しいTo-Beを作れる人」だけでなく、「そのTo-Beを組織で実現できる人」が価値を発揮しやすいといえるでしょう。PMOとしてプロジェクト推進やステークホルダー調整のスキルを深めたい方は、こちらの記事も参考にしてください!▶︎現役フリーPMOが語る!PMOが「現場で本当に求められるスキル」は何か?最後に業務改革は、既存業務の一部を効率化するだけではなく、業務の目的やプロセスそのものを見直す取り組みです。実際に進める際は、目的・ゴールを明確にし、As-Isを可視化したうえでTo-Beを設計します。その後、システム導入やBPOなど必要な施策へ落とし込み、実行後の効果測定まで行うことが重要です。また、業務改革プロジェクトでは、業務分析、IT、プロジェクトマネジメント、チェンジマネジメントなど複数のスキルが求められます。quickflowでは、フリーランスコンサルタント・IT人材向けに案件紹介や独立後のキャリア相談を行っています。「自分のBPR経験ならどのような案件に参画できるのか知りたい」「業務改革やDX領域で今後のキャリアを広げたい」このような方は、まずは下のボタンから、無料相談にお申し込みください。👇下記の無料相談ボタンをクリック!