ここ数年で、コンサル業界を取り巻く環境は大きく変わりました。リモートワークの定着、副業・フリーランスの増加、単価の二極化、、、その中で、確実に無視できない変化が「生成AIの一般化」です。ChatGPTが話題になった当初は、「すごいけど、仕事で使うものではない」「一時的なブームだろう」と感じていた人も多いと思います。正直、私もその一人でした。しかし今では、「AIをどう使うか」を考えている人と、まったく考えていない人の間に、目に見えない差が生まれ始めていると感じています。この記事では、「AIを使い倒す方法」ではなく、「フリーコンサルが『責任を取れるプロ』であり続けながら、AIで業務を加速させるバランスの取り方」をテーマに話していきます。この記事のポイントフリーコンサルは「AIを使っていいか」の確認を怠らないAIは仕事を代替させるものではなく、思考を加速させるもの。使うほど、逆に「人の判断力」が問われるAI時代でも仕事を任されるのは、責任を取れる人AIを使う前に:プロジェクトにおけるルールを必ず確認する昨今、AI活用の話になると、「どう使えば効率的か?」「どんなプロンプトがいいか?」といったテクニック論に目が行きがちです。ただ、フリーコンサルにとって最優先なのはそこではありません。最初にPMやクライアントの責任者に確認すべきなのは、「このプロジェクトでAIの利用は許可されているか?」という点です。なぜここが重要なのか。フリーランスは、会社員と違って「守ってくれる組織」がないからです。情報漏洩・契約違反・クライアントからの信用失墜などは、一度起きると取り返しがつきません。だからこそ、業務情報を入力しない固有名詞を出さない社内資料を貼り付けないというルールを自分の中で厳しめに設定しておくことが重要です。私自身は、「AIは検索エンジンの上位互換」という位置付けで使っています。このスタンスを守っていれば、大きな事故が起きる可能性はかなり低いからです。フリーコンサルのAI活用シーン4選1. 一般的な用語を確認するプロジェクトに入ったばかりの頃は、知らない言葉をそのままにしてしまうことが一番怖いです。会議中に出てくる言葉を、なんとなく理解した気になる後で調べようと思って忘れるこの積み重ねが、「理解が浅い人」という評価につながることもあります。AIは、この初期フェーズで非常に有用です。初心者向けに説明してもらうPMO視点で整理してもらう具体例を交えてもらうこうした聞き方をすることで、自分の頭の中に「説明できる知識」が溜まっていきます。例えば、私がSAP案件に未経験で入った当初、「移送」や「クライアント」など、SAP案件従事者にとっては当たり前の用語が分かりませんでした。当時はプロジェクトメンバーから教えてもらったり本を買ったりして学習しましたが、今ではAIにかなり助けてもらっています。私がSAP案件に未経験から挑戦した話については、ぜひ以下の記事をご一読下さい!2. 専門用語を確認するSAPや業界特化システムの案件では、専門用語の量が一気に増えます。専門用語の理解にもAIが役に立ちますが、重要なのは「全部理解しようとしない」ことです。全体像・役割分担・意思決定に関わるポイント、この3つを押さえておけば十分なケースがほとんどです。本当にわからない用語が出てきた時は素直にチームメンバーに聞くことも大事です。知ったかぶりではなく、知らないことを素直に「知らない」と言える人は印象が良いです。SAPで言えば「クライアントコードなどの専門的なこともAIが教えてくれるの?」と疑問に思うかもしれませんが、私の経験上は全く問題なく答えてくれました。もちろん、PMOの私が把握できる範囲でのナレッジですが。3. プロダクトナレッジを確認するAIは一般的なプロダクトのナレッジを確認する際にも非常に有用です。私はPMOとしてRedmineをメンテナンスすることが何度かあったのですが、その際にどういった機能を使えば要件を実現できるのか、といったことをAIに頻繁に聞いていました。例)Redmineの使い方・運用・メンテナンスRedmine自体は決して新しいツールではありません。長年使われてきたチケット管理ツール(※)で、多くの現場に導入されています。それにもかかわらず、「Redmineがどう使われているか」や、「Redmineをどう使ったら効率的にプロジェクトを回せるか」を正確に説明できる人は意外と少ないです。実際のプロジェクトでは、こんな会話が頻繁に起きます。「Redmine上では対応中になってるけど、実態どうだっけ?」「チケットはあるけど、優先度が分からない」「このチケット、誰が最終責任者なんだろう?」これらはすべて、Redmineの操作の問題ではなく、運用設計の問題です。ここで重要なのは、「Redmineの使い方を知っているか」ではなく、「Redmineで何を管理しようとしているのかを理解しているか」という点です。Redmineは、使い始めよりも使い続けるフェーズで問題が出ます。具体的には、完了済みなのに放置されているチケット担当者が変わったのに引き継がれていないチケットステータスだけが更新され、中身が追えないチケットこうしたものが溜まると、Redmineは「管理ツール」ではなく、「誰も信用していない情報置き場」になります。次第にプロジェクトでは、「Redmineではなくエクセルを使った方がいいんじゃないか」と言われかねません。AIに「Redmineで現状こういう課題があるんだけど、どの機能を使えばその課題を解決できるか?」と聞くとRedmineで有用な機能をAIが教えてくれます。AIの答えが正解とは限りません。しかし現場でツールの利用に不満がでているのであれば、「こういった使い方もできますよ」という案を収集するのにAIは非常に有用です。※チケットプロジェクトにおいて、発生するタスク・障害・要望・課題などを個別に記録・管理するための情報単位。ToDoリストと異なり、「誰が・いつまでに・何を・どのように」といった詳細情報(担当者、期限、優先度、進捗状況など)を含み、プロジェクト管理ツール(Jira, Redmineなど)上で一元管理することで、タスクの抜け漏れ防止、進捗の可視化、チーム全体の生産性向上を図る。4. コードを作成するフリーコンサルの仕事、特にPMOの仕事は、「考えること」「調整すること」が中心です。ただし実際の現場では、「それを裏付けるための軽い手作業」が必ず発生します。その代表例が、Excelや簡単なスクリプトです。現場で起きるリアルな依頼は例えば、こんな依頼です。この期間の進捗データだけ抜いてほしいこの数字、切り口変えて見られない?一度集計したけど、条件変えてもう一回見たいこのような要望を受けた時に、毎回はじめから作成すると時間がかかります。ここでAIを使うと、ものすごく時短になります。AIに条件を文章で投げると、コードやExcel関数の叩き台が返ってきます。これは完成品である必要はありません。構文のヒント・処理の流れが可視化されることで、作業の半分は終わっている感覚になります。ここで一つ注意して欲しいのが、「理解できないコードは使わない」ということです。AIが書いたコードについて、なぜこの条件が必要なのかどこを変えれば結果が変わるのかこれを説明できない状態で使うのは、フリーランスとしてかなり危険です。AIは「コードを書く存在」ではなく、「考えをコードに落とすスピードを上げる存在」と捉えるのが最適であると言えます。【おまけ】雑談や愚痴に使用する 〜思考と感情の壁打ち〜あまり表では語られませんが、フリーコンサルの生産性に直結するテーマです。フリーランスは、仕事の悩みを「途中の状態」で話す相手がいません。会社員であれば、同僚との雑談、上司への軽い相談といった逃げ道があります。しかしフリーランスにはそれがありません。モヤモヤが溜まる典型パターンは例えば、こんな状態です。PMの進め方に違和感があるが、指摘するほどでもないクライアントの期待値がズレている気がする自分の立ち回りが正解か分からないこれらを放置すると、判断が遅れたり、無駄に消耗したりします。こうした状態のときにAIは壁打ち相手として便利です。やることはシンプルに、事実をそのまま文章にする自分の感情も正直に書く「整理してほしい」と投げる「ムカつく!」といった感情的なことも書いて構わないです。すると、事実と感情が切り分けられ、問題の大きさが客観視できるようになり、今すぐ動くべきかどうかを判断しやすくなります。感情に引っ張られやすいフリーランスの思考整理と非常に相性が良いです。愚痴を肯定してもらうためではなく、冷静さを取り戻すための道具として使う。この距離感が、ちょうど良いと思っています(笑)最後にAIは、フリーコンサルの敵ではありません。むしろ、使い方を理解している人の価値を引き上げる存在です。ただし、考えることまでAIに任せた瞬間、コンサルとしての価値は下がってしまいます。AIは補助輪であって、走るのは人間です。この感覚を忘れずにいれば、AI時代でもフリーコンサルは十分に戦えます。