フェーズ解説シリーズ第2弾は、経験したことのある人が多い【基本設計】についてです!基本設計はベーシックなフェーズでありながら、実は要求されるスキルが高いことが多く、基礎となるフェーズだからこそ知っていただきたいポイントがあります。SAPプロジェクトにおいて要求される基本設計のスキルを理解しましょう。今回の記事では筆者の経験に基づき、移行フェーズのポイント解説をいたします。筆者はSAP導入プロジェクトを5つ以上経験し、移行フェーズにつきましては3回経験しています。基本設計についての説明も載せていますので、ぜひSAP初心者の方もご参考にしてください。この記事のポイント基本設計はクライアントが求める機能の設定(カスタマイズ)、企業の組織定義、権限設計を行う重要なフェーズです。アドオンプログラムの開発の基礎となる基本設計書の作成も行います。基本設計フェーズのスキルセットを全て持っていれば、案件獲得は確実!SAPプロジェクトの基本設計とは?基本設計は最終形態の「下書き」基本設計は要件定義が完了した後に行われます。海外で Realization/Implementation の一環である Design Phase となります(※)。クライアントの要件をシステム機能に落とし込むことが作業になります。概要設計の作業では、機能単位でどのような機能にするのか、画面の入力項目をどうするか、画面のデザイン、使うデータの整理などを行います。概要設計以外だとSAP標準機能を要件に合わせて使えるようにするカスタマイズや、クライアントの会社の姿をシステムに落とし込む組織定義、SAPの各機能を実行する権限を誰にどう与えるか決める権限設計があります。下流フェーズは基本設計からなので、技術的なスキルが求められることが多いイメージを持っている方が多いと思います。下記でも詳しく書いていますが、技術的なスキル以外にもコンサルスキルが必要になってくる場面もあります。基本設計について更に知りたい方は、詳しく解説している下記の記事をご覧ください。どのフェーズから経験すればいいの?~独立を目指す人のためのフェーズ解説~ |フリーコンサルが読むメディア|media.quickflow※設計を「基本」と「詳細」で細かく分けているのは日本特有だと筆者の経験上感じます。SAPフリーランスが基本設計に求められるスキルは?基本設計はコンサル側に軽く見られがちだと筆者は考えます。基本設計から可能、というフリーコンサルは多いですが、基本設計のポイントを掴めているコンサルタントはそう多くないです。実際プロジェクト側が求めている基本設計のスキルと、フリーコンサル側が考える基本設計のスキルに乖離が多少あります。概要設計なら経験したことある、カスタマイズは定義書を見た上での設定作業ならしたことがある、といったコンサルが多いですが、実際案件で頻繁に求められているのは自力でカスタマイズ定義ができることであったり、組織定義まで行えることであったりします。基本設計では概要設計を中心とした作業が多いですが、この記事では概要設計以外の要素について注目します。案件が求めるスキルをしっかり身に付けられているかどうか、この記事で確認してみてください。基本設計、侮ることなかれ基本設計において3つの重要要素があります。「カスタマイズ」、「組織定義」、「権限設計」です。基本設計経験者の方、きちんと網羅できていますでしょうか?※プロジェクトによって、基本設計フェーズで移行定義を開始する場合があります。quickflow mediaでは「移行」という大きな括りに分類しています。キーポイントは「カスタマイズ定義」と「組織定義」そのうち「カスタマイズ定義」と「組織定義」が様々な案件で特に求められるスキルです。特に「カスタマイズの経験があるかどうか」は注目ポイントになりやすいです。「権限設計」は対応できれば尚良しですが、ピンポイントで求めている案件は少ないです。① カスタマイズ(コンフィグレーション)💡 カスタマイズとは? カスタマイズは別名コンフィグレーションと呼ばれているものであり、SAPで使える各機能の設定になります。コンフィグレーションのメニューから各設定の画面に入ります。多くの場合、カスタマイズしたものを移送番号に紐づけて開発機→品証機→本番機といった順でSAPクライアント間に移送します。カスタマイズ定義ができる、ということは、業務を理解できているということに等しく、カスタマイズこそが基本設計の肝であると言えます。定義書を見た上でポチポチとコンフィグ設定をやったことがある、ではなく、クライアントのニーズに合わせてゼロからカスタマイズの定義ができる(定義書を作成できる)レベルになれれば1人前です。カスタマイズは確かに何千個もあるのでマスターするまでは非常に大変ですが、効率よく抑えていけばマスターするまで1年はかからないでしょう。カスタマイズについて、ポイントは2つあります。主要なカスタマイズは暗記しておく1番重要となるような設定がどこかをまず把握し、それらについては設定値と設定値の内容を理解し、覚えます。T-codeがあるものはT-codeも覚えると尚良し。各モジュール毎で重要となるカスタマイズを把握しましょう。 例)MM領域であれば主要移動タイプは知識として必須になります。311などは有名ですね。有名どころは聞かれたら即答できるくらい「当たり前」レベルに覚えておきましょう。他にも、SDの価格決定表の仕組み、PPの製造指図タイプの設定、品目マスタにおける必須項目など、いろいろありますので、おさえておきましょう。細かいマイナーなカスタマイズは理解しておけばOKメインカスタマイズではない細々した設定は、何回か設定して内容を掴むくらいでOKです。細かい設定値を必ずしも覚える必要もなく、必要あればGoogleで検索して手順を読んで設定の仕方を思い出せる、くらいのレベルにしておく程度で十分です。設定に関する細かいことよりかは、そのカスタマイズがトランザクションにどのような影響を与えるのか、クライアント毎の設定が必要かどうか、など概要を覚えた方が良いです。「〇〇領域であればカスタマイズは一通り自走できます!」と言えるくらいになれば、基本設計の案件探しで困ることはないです。② 組織定義次に重要なのは組織定義になります。💡 組織定義とは? 会社の姿をシステム上に実現するのが組織定義です。SAPには「会社コード」「販売会社」「プラント」といった様々な「単位」が存在し、その単位を使って伝票を起こします。そのため、組織定義は重要なデザインとなってきます。なぜ組織定義が重要なのかというと、クライアントが自分で実施できないからです。クライアントは自分の企業の組織構造をわかっていたとしても、それがSAPに反映した時どのようになるのかイメージできていませんし、そもそもどのような組織定義をすればシステム的にスムーズにデータが流れるようになるのかも理解していません。コンサルタントとしての仕事は、クライアントの組織定義をインプットし、それをシステムに落とし込んで「最善」であるシステム組織定義を設計することです。例として、SD領域の「販売組織」や「流通チャンネル」、ロジ領域全般に関わる「プラント」の設定や、会計系の「会社コード」はありますね。どの拠点を製造プラントとするか、販社プラントとして扱うか、などもよくある議論ポイントです。システムでどの粒度で設定すれば伝票のあり方としてベストか、を考えるのがコンサルタントの仕事になります。③ 権限設計💡 権限設計とは? SAPではユーザーが使えるトランザクションコードの権限を与えていくイメージです。どのユーザーがどのトランザクションを使えるか、を定義するのが権限設計になります。権限設計のスキルをピンポイントで要求してくるプロジェクトは少ないですが、案件のお仕事の一環として要求される可能性は高いでしょう。権限設計は、スキルとして求められることは少ないですが、意外と重要です。「この部門のユーザーには伝票のここまでしか見せたくない」や、「この部門のユーザーにはここまでしか処理させたくない」といったユーザーのデマンドはしばしば発生します。その際に、うまく権限設計ができると無駄なアドオンや業務ステップを増やすことが防げますし、権限設計をきちんと理解することでお客さんに納得してもらえる説明ができ、回避策で妥協していただけるようになります。プロジェクト毎に権限設計の方針が決まっていることが多いので、ユーザー、ロール、単体ロールや集合ロールについて最低限の知識は付けておきましょう。おまけ① 概要設計は?SAPアドオンプログラムや外部システムI/Fの仕様書を作成します。画面をどうするか、どのデータを持ってきて、どういう処理をするか、といったおおまかな機能の概要を決めていきます。この時点では細かい設計書やコードをどうするかまでは決めません。ほとんどのSAPコンサルは概要設計をきちんと経験しているでしょう。概要設計の中でも、特にI/Fの概要設計経験があると重宝されますので、可能であれば自分の領域でよくあるI/F機能の基本設計を経験しておくと良いです(生産領域であればMESとの連携、など)。おまけ② コンサルティングスキルも必要基本設計では設計書作成経験、カスタマイズ、といったスキル以外にも、クライアントとのコミュニケーション力が求められます。クライアントとのコミュニケーションであったり、打ち合わせが特に発生するのは「組織定義」あたりになります。場合によってはカスタマイズも打ち合わせした上で決める対象になります。クライアントとのコミュニケーションが取れるコンサルタントが基本設計のリードやサブリードを任されるので、基本設計フェーズでも「コンサルタントとしてのスキル」を十分発揮できるように準備しておきましょう。SAPフリーランスが基本設計スキルを習得する3つのメリット単価が上がる基本設計ができる人の中でも、きっちりカスタマイズができてリード系のタスクができるようなコンサルは少ないため、単価UPが見込めます。 カスタマイズ以外でも、I/F概要設計経験であったり、組織定義の経験があったりすると単価を高めに設定できる傾向が強いです。案件参画期間が伸びる他の下流フェーズに対しても言えることではありますが、基本設計フェーズで参画すれば、それ以降のフェーズができればそのまま案件に残れる可能性が高いです。基本設計が下流フェーズの序盤となるので、早めに参画してバリューを出すことができれば案件内での株も上がりますし、より多くの領域を任せてもらえることも。また、今まで上流メインでやってきた人が基本設計ができると、要件定義から参画している案件にそのままスライドで基本設計フェーズを任せられるようになります。SEからコンサルへステップアップしたい人におすすめ今まで開発や保守をメインに携わってきたSEの方は、ぜひ基本設計を武器にしてコンサル領域に進んでいただきたいです。基本設計のスキルがしっかりしていれば、さらに上流の要件定義にも挑戦しやすくなります(要件定義でもシステム知識は必要になります)。SE業務からコンサル業務へとシフトしていきたいな、と考えている方は、基本設計がちょうど良いブリッジになるフェーズなので検討してみてください。最後に基本設計は一番 “SAP技術力が求められる” というイメージがついています。実際そういう面もありますが、前述した通りコンサルタントとしての力量も試されるフェーズでもあります。また、基本設計から求人の数は多くなる傾向があります。案件の幅を安定して広げるためにも、基本設計をきちんとこなせるようにしておくと良いです。基本設計を自信もってこなせると、そのモジュールにおいて活躍できる確率がぐんとUPします!まだ基本設計をマスターできていない人は是非勉強しましょう。