『今後のビジネスパーソンに重要なスキルは何か』という、TOEIC運営元が行った調査(2019年)によると、多くの企業の採用担当者が「英語」であると回答しています。また同調査の結果から、社員や職員に不足している・今後強化する必要がある知識やスキルに関しても、「英語」であるとの回答が多く寄せられました。これらの結果から、英語がビジネスの世界でいかに重要視されているのか、また英語を扱える人材の需要に対して、供給が追いついていないことが読み取れます。グローバル化の進む現代においては、フリーランスのあなたにとっても、英語力の向上は市場価値向上に直結します。TOEICは英語力のレベルを測るグローバルな指標です。この記事では、TOEICの勉強に多くの時間を割くことができない多忙な社会人が、効率的・かつ効果的にハイスコアを目指すための方法をお伝えします。TOEICでハイスコアを取得することのメリットTOEICにおけるハイスコアの獲得、つまりある程度のレベルのビジネス英語力を身につけることは、フリーランスを含む全ての社会人にとって価値があります。ビジネスレベルの英語力を習得することで、得られるメリットを大きく3つまとめました。① 扱える情報の質や量が格段に上がるTOEICの学習を通して得られる最大のメリットは、情報アクセスの幅が広がる点です。2024年現在、全世界のウェブサイト約20億のうち日本語サイトはわずか2.6%、英語サイトは25%を占めています。ネット上に限らず紙媒体においても同様、得られる情報量の差は圧倒的です。また、英語を使うことでAIツールの活用効果も大きく変わります。例えば、ChatGPTや他の生成AIツールの多くは英語を主要な開発言語としているため、英語で指示を与えることで、より高品質なアウトプットを引き出すことが可能です。生成AIの使用がビジネスにおいて日常化しつつある現代において、この差は仕事の効率や成果に直結すると言えるでしょう。② ビジネスチャンスを拡大できるTOEIC高スコア取得者は、クロスボーダー案件を受注できる可能性が高まります。JETRO(日本貿易振興機構)が行なった調査の結果から、国内企業における海外事業の拡大意欲は上向いていることが分かっています。グローバル化が進行する現代、企業の海外事業展開に関するコンサルティングなど、英語を必要とする案件数は今後増加すると推測できるでしょう。③ 市場価値の向上に繋がる日本人の英語レベルは100ヵ国中55位と世界的に見ても低水準であり、流暢に英語を話せる人はわずか2.5%程度です。当然これはTOEICの平均スコアにも現れており、2023年度の平均スコアは612点、900点以上を所持する人は全体の5%にも達しません。このことから分かるように、英語力向上は他者との差別化に直結し、市場価値を高めることに繋がります。TOEICの誕生とグローバルな指標としての現状TOEICの運営には、ETC(Educational Testing Service)と、IIBC(一般財団法人 国際ビジネスコミュニケーション協会)の2つの組織が関わっています。ETSは1947年にアメリカで設立された世界最大の非営利テスト開発機関で、世界的に有名なTOEFLをはじめ、アメリカの公共機関や学校関係のテストの大半を開発・製作するという実績を持っています。また、IIBCは1986年に設立され、日本国内におけるTOEICの試験運営を担っている機関です。「グローバルコミュニティにおける円滑なコミュニケーションの促進をミッションとし、人と企業の国際化に貢献」するという理念のもと、試験の運営に加えて、出版や人材育成プログラムなどの事業にも力を入れています。公式サイトによると、TOEICは現在、世界150カ国で実施されており、年間約700万人を超える人々が受験しているとされています。2024年7月18日に公開されたデータによると、2023年のTOEIC L&R Testの平均スコアの世界ランキングにおいて、日本は34/45位。日本の順位が低いことは一度触れずに、注目して欲しいのはランキングの母数です。このランキングの但し書きとして、「年間受験者が500名以上の国・地域のみ掲載」とあることから、TOEICが実施されている150カ国のうち、105カ国は年間受験者が500人に満たないことになります。この結果をどう捉えるかは人それぞれですが、「150ヵ国で実施されている」と断言するのは少し痩せ我慢に感じてしまいますね。しかしヨーロッパやアジアの主要な国で通用する指標であることは明確です。筆者は、フランスに拠点を置くビジネススクールの、イギリスにあるキャンパスで留学をしていたという変わった経歴があります。そこで出会ったフランス人学生は全員TOEICスコア800以上の取得が義務付けられており、私の当時のスコア(870)を伝えると驚かれました。ここまで、TOEICがグローバルな指標としてどの程度通用するのかを見てきました。しかしフリーランスとして活動し、案件の幅を広げたいと考える方々にとって、そのスコアを評価するのは主に日本の企業であることが多いでしょう。その点では、TOEICは「日本で通用する資格」として十分な価値を持っていると言えます。対策を始める上での心構えTOEIC対策におけるいくつかの基本方針を紹介する前に、「英語力を向上させる」上で心に留めておいて欲しいことがあります。これは私がこの記事を通して一番伝えたいことでもあります。英語力向上において一番大事なこと、それは「英語を『勉強』として捉えないこと」です。語学の習得に近道はありません。長い時間をかけて英語を「勉強」しなければならないと考えると、誰だって嫌になります。英語を嫌い・苦手という意識を少しでも持ってしまうと、英語力向上からは遠ざかってしまいます。英語に限らず語学力を伸ばすためには、できる限り自分の生活に取り込み、日常的に触れ続けることが大切です。このことを念頭において、以下にTOEIC対策の基本方針を紹介します。まずは現状を把握する社会人として忙しい日々を送っている場合、全体的に勉強するのではなく、弱点を狙い撃ちすることが得点アップの鍵となります。まずは一度試験を受け、現状のスコアや課題となるセクションを確認することから始めましょう。リスニングから対策を始めるTOEICに慣れていない人の多くがリーディングパートを最後まで解き終わることができません。つまりリーディングのスコアアップには、正確性とスピードを同時に鍛える必要があるのです。それに比べて、先にあるリスニングパートは絶対に最後まで解くことになります。言い換えれば、リスニング力を向上させれば、それだけスコアに直結するということです。まずはリスニングパートのスコアアップに注力し、それからリーディング対策へとシフトすることをオススメします。長期的な計画を立てる高スコアの取得を目指すには、1〜2回の受験では難しいこともあります。何事も成功体験なしでは継続できません。ゴールを細分化し、複数回の受験を通してそれらを達成することで、目標のスコアへと到達できるような長期的な視野を持って学習に取り組みましょう。Listeningの対策方法TOEICや英検のテキストに、リスニング対策用のCDが付属していることがよくあると思います。果たしてあの音源を聴くことでリスニング力は向上するでしょうか。答えはもちろんノーです。これは持論ですが、TOEICを対策する際に、リスニングの学習時間は必要ないと思っています。わざわざリスニング対策の時間を確保し、TOEICの音源を聴くのであれば、その時間で単語をインプットした方が有意義です。ここで上の章で話したことを思い出して下さい。英語を学習しているという意識を持たないこと、日常生活にできるだけ組み込むこと。リスニング力向上においては、これが特に重要となります。そこでオススメなのが洋楽鑑賞です。洋画・洋ドラ鑑賞なども選択肢としては悪くないですが、洋楽に比べると少々デメリットがあります。例を挙げるならば、①初めて観るものであれば日本語字幕が必要となり、結局はそちらに集中してしまうこと ②ある程度のまとまった時間を要すること ③反復が難しいこと、などです。以下のステップをもとに、洋楽鑑賞を趣味として取り入れ、「気がついたら前よりリスニング力上がっているかも」という状態を目指しましょう。自分が気になる洋楽をいくつかリストアップする:普段から洋楽を聴く習慣がない人は、ここが一番難しいステップかもしれません。そんな時は王道の歌手(Justin BieberやEd Shearan)の曲、または邦楽で自分が好きなジャンルの洋楽バージョンを選ぶと良いと思います。大事なことは、「結局この曲は何について歌っているんだろう」と興味を持つことです。歌詞を調べ意味を理解する:こんなことを歌っていたんだ!と驚くこともあるでしょう。その感覚が大事です。洋楽は、邦楽とは違い、かなりダイレクトな表現をしていることが特徴です。歌詞を調べる中で、自分の心に響く曲がいくつか見つかるはずです。英語の歌詞を見ながら聴く:歌詞を理解したら、英語の歌詞を見ながら聴いてみましょう。曲の内容を理解した状態で何度も聴くことで、英語の意味と音が結びつき、視覚と聴覚の両方から自然にインプットすることができます。逆に言ってしまえば、意味の分からない状態で洋楽を聴いていても意味がないということです。「洋楽を聞いているだけでは英語は上達しない」と主張する多くの人は、そのような聴き方を指しているのでしょう。気に入った曲の歌詞を覚えて口ずさんでみる:初めはサビだけでも構いません。初心者にオススメするのはAvi Ciiの『Wake me up』など、EDMと呼ばれるジャンルです。全体的に歌詞が少ないので、覚える際のカロリーは低いでしょう。もちろんその曲を気に入っていることが前提ですが。Readingの対策方法リーディングパートの対策においては、リスニングのように学習時間を設けないというわけにはいきません。しかし、闇雲に過去問などを解いていても、時間の制約がある社会人にとって効率的とは言えないでしょう。そこで読解力を上げるための勉強方法を、いくつかのステップに分けて紹介します。単語をインプットするどれだけ文法が完璧であっても、4つの選択肢のうちの2つ以上に分からない単語が含まれていては詰んでしまいます。覚えている単語数はスコアに直結すると覚えておきましょう。ボキャブラリーを増やすためのおすすめ教材としては、「金のフレーズ」シリーズ(通称 金フレ)が非常に効果的です。目標のスコア別に章が分かれており、自分のレベルに合った段階的な学習が可能です。移動や就寝前などの時間を活用し、自分で決めた時間・単語数で着実に学習を進めましょう。文法を見直す文法と聞くと顔をしかめる人も多いでしょう。言ってしまえば、筆者もそのうちの一人です。しかし安心して下さい、高校で習ったレベルの文法はスコアアップに必要ありません。長文問題の読解などに支障が出ないよう、中学レベルの文法で不安がある場合は復習しておきましょう。文法力が顕著に関係するのは、パート5の短文穴埋め問題です。一度受験した結果、このパートが足を引っ張っていると感じた場合は、パート5対策に特化した問題集で後から補強しましょう。速読力を鍛える心構えの章で述べた通り、リーディングパートを伸ばすためには、「正確性」と「速読力」を同時に鍛える必要があります。特に850点以上のスコアを目指すのであれば、最後まで解き切ることは絶対条件です。速読力を鍛えるにはリスニングと同様、英文を読むことに「慣れる」必要があります。おすすめのトレーニング方法としては、SNSやニュースアプリを活用し、英語の短い記事を読む習慣をつけることです。例えば、InstagramやXといったSNSで、CNNやBBCのアカウントをフォローしておけば、普段のSNS閲覧時に気軽に英文に触れることができます。興味を持った内容だけでも、毎日少しずつ英文に触れることで、読解スピードと理解力が向上していきます。受験時のTips実際にTOEICを受験する際に役立つ裏技をいくつか紹介します。これらを取り入れることで、大幅なスコアアップが期待できます。L:マークシートの塗りつぶしは後回しにするリスニングセクション中、問題を解くたびにマークシートを塗りつぶすのではなく、斜線やチェックなど自分が分かる印をつけておきましょう。空いた時間を使って次の問題・選択肢を先読みし、次の設問に備えます。リスニングセクションが終わってから、リーディングセクションの最初の時間を使って、まとめてマークシートを塗りつぶします。リーディングの時間が少し削られてしまうことがネックですが、一度騙されたと思って試してみて下さい。たった数秒の差でも、リスニングのスコアには大きな差が出るはずです。R:解ける問題を確実に取るリーディングセクションでは、すべての問題を完璧に解こうとせず、解ける問題から確実に得点することが大切です。特にパート7の長文問題では、設問の難易度にばらつきがあります。例えば、一つの長文につき4問ある中の最初の3問は簡単な内容理解の問題で、最後の1問は全体理解が必要となる要約問題というパターンがあります。この場合、要約問題は時間を要するため、一旦飛ばし、最後の余った時間で再挑戦する意識を持ちましょう。L&R:ひっかけの選択肢を意識する両セクションにおいて、TOEICには「ひっかけ」の選択肢が多く含まれています。特にリスニングにおいて、音声中に出てきたフレーズが選択肢に登場することがありますが、高確率でそれはトラップの選択肢です。あからさまなキーワードに惑わされず、ひっかけの選択肢があることを意識して回答しましょう。目標達成までのモデルケースここまで紹介してきたTOEIC対策方法を通して、どのようにスコアを伸ばすことができるのか、筆者の経験をもとにしたモデルケースを見ていきましょう。もともとの点数を600点(L:300, R:300)と想定して、900点に到達するまでの段階を紹介します。600 → 750 (L: 400, R: 350)洋楽にハマり、通勤中などの移動時間は欠かさず聴くようになる。「気に入った曲をカラオケで歌えるようになりたい」という思いから、歌詞を調べて覚えるようになり、リスニング力の向上を感じる。洋楽にハマってから約一年後のテスト当日、リスニングパートでの先読みテクニックを実践することで音声が格段に聴き取れるようになり、さらに洋楽の歌詞で覚えたボキャブラリーがリーディングにも活き、全体のスコアUPに繋がる。結果:約一年間で150点アップ!750 → 850 (L: 450, R: 400)洋楽を聴く習慣が定着し、口ずさめる曲も増えてきたことで英語の発音やイントネーションにも慣れ、ネイティブ英語への抵抗感がほぼなくなった。リスニング力の向上を実感したタイミングで、リーディング強化にシフト。単語対策として「金フレ」を活用し、860点レベルまでの単語を毎日コツコツ覚えることに。洋楽で耳にした単語が多かったおかげで、以前より効率よく頭に入った。さらにリーディングパートの時間不足を克服するため、英語ニュースに触れることを日課にして読解スピードを鍛える。エンタメニュースを中心に興味を持ちながら続けた結果、リーディング力も飛躍的に向上した。結果:約半年間で100点アップ!850 → 900(L: 470, R: 430)850点を超えた時点でリスニング力はほぼトップレベルに到達。さらに満点を目指し、ポッドキャストのBBCニュースのリスニングに挑戦。ネイティブの会話スピードに慣れるという意識で聴き流す。一方で、リーディングのパート5がスコアの足を引っ張っていることが判明。スピードと正確性が求められるこのパートを克服するため、文法の復習を含めた本格的な試験対策をスタート。これまでの学習スタイルを一歩進化させ、弱点を徹底的に潰していく。結果:約半年間で50点アップ!ここでついに悲願の900点を達成です!この2年間の取り組みを通じて、英語学習はあなたにとって好奇心を刺激する日々の楽しみへと変わっていることでしょう。英語を「学問」として捉えるのはなく、「言語」そして「コミュニケーションツール」として活用する力を身につけ、新たなビジネスチャンスを切り開く準備が整っているはずです。最後にTOEIC対策を通じて英語の読解力、リスニング力を鍛えることで、実際の業務での自信やスキルアップにもつながります。さらに、英語に触れる習慣が身につくと、次のステップであるスピーキングやライティングなどの実践的スキル向上への道も自然と開けてくるでしょう。言語の習得は一朝一夕ではありませんが、自ら興味を持ち、楽しんで学ぶ姿勢が英語力アップの秘訣です。あなたの挑戦を応援しています!