本記事では、個人事業主が還付金を受け取れる条件、還付金の計算方法、確定申告の手順、振込時期を解説します。フリーコンサルタントやITエンジニアを想定した独自試算も紹介するため、「自分は還付金を受け取れるのか」「確定申告をするといくら戻ってくるのか」を確認する際にお役立てください。個人事業主の還付金とは|払い過ぎた所得税が戻る仕組み還付金とは、すでに納めた所得税が本来の所得税額を上回っていた場合に、その差額として返還されるお金です。個人事業主の所得税は、1月1日から12月31日までの売上、必要経費、所得控除などを基に計算します。その後、計算した所得税額から源泉徴収税額や予定納税額を差し引き、納税額または還付額を確定させます。確定申告書を提出する義務がない人でも、源泉徴収税額や予定納税額が年間の所得税額より多ければ、確定申告によって還付を受けられます。この手続きを「還付申告」といいます。(※還付申告の対象者や期限については、国税庁の「No.2030 還付申告」で確認できます。)消費税の還付は、原則課税を適用している課税事業者について、売上にかかる消費税額よりも仕入れや経費などで支払った消費税額の方が多い場合に発生するものです。本記事では、個人事業主が確定申告によって受け取る「所得税の還付金」を中心に解説します。個人事業主が還付金を受け取れる主なケース個人事業主が還付金を受け取れる代表的なケースは、源泉徴収や予定納税によって所得税を多く納めていた場合です。所得控除や税額控除の適用により所得税額が下がった場合や、青色申告者が純損失の繰戻しを行う場合にも還付が発生する可能性があります。報酬から源泉徴収された所得税が多かった場合個人事業主が受け取る報酬のうち、原稿料、講演料、特定の資格者への報酬などは、支払い時に所得税および復興特別所得税が源泉徴収されることがあります。コンサルタントについても、企業の状況を調査・診断し、経営改善の指導を行う業務は、源泉徴収の対象となる「企業診断員」の業務に含まれる場合があります。ただし、「コンサルタント」「ITエンジニア」という肩書だけで源泉徴収の有無が決まるわけではありません。実際の業務内容、契約内容、報酬の性質によって判断されます。(※源泉徴収の対象となる報酬については、国税庁の「No.2792 源泉徴収が必要な報酬・料金等とは」を参考にしてください。)源泉徴収は所得税の前払いです。年間の所得から計算した所得税額より、すでに源泉徴収された税額の方が多ければ、その差額が還付されます。源泉徴収額は、次の資料から確認できます。取引先から受け取った支払明細請求金額と実際の入金額会計ソフトに記録した源泉徴収税額取引先から任意で交付された支払調書報酬に関する支払調書は、取引先から本人へ交付することが法律上義務付けられていません。そのため、支払調書が届かない場合でも、請求書、入金明細、帳簿などから年間の源泉徴収税額を集計する必要があります。源泉徴収の仕組みや計算方法を詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。▶︎いまさら聞けない?フリーコンサルの源泉徴収の流れについて徹底解剖!予定納税額が確定した所得税額を上回った場合予定納税とは、前年分の所得税額などを基に、当年分の所得税の一部をあらかじめ納付する制度です。前年より案件単価や稼働率が下がった場合、休業期間が発生した場合、大きな経費を支出した場合などは、当年の所得税額が予定納税額を下回ることがあります。例えば、予定納税で90万円を納付していても、確定申告で計算した所得税および復興特別所得税が30万円であれば、原則として差額の60万円が還付対象です。予定納税を行った人は、確定申告書を作成する際に予定納税額が正しく入力されているか確認しましょう。所得控除・税額控除や損失の繰戻しを適用した場合社会保険料控除、医療費控除、生命保険料控除などを適用すると、課税所得が減り、最終的な所得税額が下がります。また、住宅ローン控除などの税額控除は、計算後の所得税額から直接差し引かれます。控除を適用した結果、源泉徴収税額や予定納税額が本来の所得税額を上回れば、差額が還付されます。青色申告者が事業で赤字になった場合は、一定の条件を満たせば、その純損失を前年の所得へ繰り戻し、前年に納めた所得税の還付を請求することも可能です。純損失の繰戻しを利用する場合は、通常の確定申告書に加えて「純損失の金額の繰戻しによる所得税の還付請求書」を確定申告期限内に提出します。通常の還付申告とは必要書類や期限が異なる点に注意してください。(※手続きや提出書類は、国税庁の「純損失の金額の繰戻しによる所得税の還付請求手続」で確認できます。)個人事業主の還付金はいくら?計算方法を3ステップで解説還付金額は、単純に売上へ一定の割合を掛けて求めるものではありません。売上から所得、課税所得、所得税額を順番に計算し、最後に源泉徴収税額や予定納税額との差額を求めます。1.売上から必要経費を差し引いて所得を計算する最初に、1年間の売上から事業に必要な経費を差し引きます。売上-必要経費=青色申告特別控除前の事業所得対象となる経費には、業務用パソコン、通信費、交通費、会議費、外注費、会計ソフト代などがあります。ただし、私生活にも利用している支出は、事業で使用した割合だけを経費として計上します。青色申告を行っている場合は、要件に応じて10万円、55万円または65万円の青色申告特別控除を適用できます。65万円控除を受けるには、複式簿記などの要件に加えて、原則としてe-Taxによる申告または優良な電子帳簿の保存が必要です。(※詳しい適用条件は、国税庁の「No.2072 青色申告特別控除」をご確認ください。)売上-必要経費-青色申告特別控除=事業所得必要経費を多く計上するほど還付金が必ず増えるわけではありません。事業に関係のない支出や、根拠を説明できない支出を経費に含めることはできないため、領収書や取引内容を確認しながら正確に集計しましょう。2.所得控除・税率・税額控除から所得税額を計算する事業所得を計算したら、基礎控除や社会保険料控除などの所得控除を差し引き、課税所得を求めます。事業所得などの合計所得-所得控除=課税所得所得税率は、課税所得に応じて5%から45%までの7段階に分かれています。所得税額は、国税庁の「所得税の税率」に掲載されている速算表を使い、次の式で計算できます。課税所得×所得税率-速算表の控除額=基準所得税額その後、住宅ローン控除などの税額控除を差し引きます。さらに、原則として基準所得税額の2.1%に当たる復興特別所得税を加えて、その年に納める所得税等を求めます。なお、基礎控除額は一律ではありません。2025年分と2026年分は、合計所得金額に応じて58万円から95万円まで段階的に設定されています。(※最新の控除額は、国税庁の「No.1199 基礎控除」で確認しましょう。)所得控除の種類や適用条件を詳しく確認したい方は、こちらの記事も参考にしてください。▶︎【フリーランス税金あれこれシリーズ】所得控除15種類を一挙に解説(物的控除編)3.源泉徴収税額・予定納税額との差額を計算する最後に、計算した所得税および復興特別所得税から、すでに納付している税額を差し引きます。源泉徴収税額+予定納税額-本来の所得税等=還付金額計算結果がプラスであれば、その金額が還付されます。反対に、本来の所得税額の方が多ければ、還付ではなく差額を納付しなければなりません。例えば、本来の所得税等が50万円、源泉徴収税額が70万円の場合、概算の還付金は20万円です。一方、本来の所得税等が80万円、源泉徴収税額が70万円であれば、差額の10万円を納付します。【独自試算】フリーコンサル・ITエンジニアの還付金を3ケースで比較還付金が発生するかどうかは、売上や経費だけでなく、報酬から源泉徴収されているか、予定納税を行っているかによって大きく異なります。ここでは、フリーコンサルタント・ITエンジニアに多い働き方を想定し、quickflowメディア編集部が3つのケースで還付金を試算しました。以下の表から、自分に近いケースを選んで確認してください。現在の状況確認するケース報酬から所得税が源泉徴収されているケース1報酬から源泉徴収されておらず、予定納税もしていないケース2予定納税をしたが、前年より売上や所得が減ったケース3いずれにも当てはまらない本章を飛ばして「確定申告の手順」へ進むここでの試算は、2025年分の所得税制度と、次の前提条件を基にしています。国内に居住する個人事業主事業所得以外の所得はない青色申告特別控除65万円を適用税額控除は適用しない所得税と復興特別所得税を合算消費税は計算に含めない金額は1,000円単位を目安に表示また、実際の還付金額は、申告する年の税制、所得控除、税額控除、家族構成、ほかの所得などによって異なります。ケース1.源泉徴収あり|経営コンサルタントの場合法人クライアントから、源泉徴収の対象となる経営コンサルティング報酬を毎月80万円受け取っているケースです。1回の支払額が100万円以下の対象報酬について、所得税および復興特別所得税を合わせた源泉徴収税率を10.21%として試算します。このケースでは、年間の源泉徴収税額が、確定申告で計算した所得税等を上回るため、約19万8,000円が還付される計算です。ただし、所得控除が少ない場合や、ほかの所得がある場合は、還付額が減ったり追加納税になったりする可能性があります。ケース2.源泉徴収なし|ITエンジニアの場合年間売上や必要経費はケース1と同じですが、独立初年度などで予定納税をしておらず、通常のシステム開発・保守報酬からも源泉徴収されていないケースです。このケースでは、所得控除や必要経費を計上しても、前払いしている所得税がないため還付金は発生しません。個人事業主の還付金は、控除によって税額が下がっただけで受け取れるものではなく、源泉徴収や予定納税などによる「前払い」があることが前提です。なお、IT関連の報酬がすべて源泉徴収の対象外になるとは限りません。実際の業務が、科学技術に関する高度な専門的応用能力を必要とする計画・設計・分析・評価などに該当する場合は、源泉徴収の対象となる可能性があります。契約上の肩書だけで判断せず、業務内容を確認しましょう。ケース3.予定納税あり|売上や所得が下がった場合前年より案件数や稼働率が下がったものの、前年の所得を基準として予定納税を90万円行っていたケースです。このケースでは、予定納税額が確定した所得税額を大きく上回るため、約72万7,000円が還付される計算です。高単価案件の終了、稼働率の低下、独立後の休業などによって所得が下がった年は、予定納税額と確定した所得税額の差が大きくなる可能性があります。quickflowでは、フリーランスコンサルタント・IT人材向けに案件紹介や独立後のキャリア相談を行っています。手元に残る金額を増やしたいと考えている方は、還付金だけでなく、案件単価、稼働率、契約条件を含めて働き方を見直すことも重要です。そのような方は、まずは下のボタンから、無料相談にお申し込みください。👇下記の無料相談ボタンをクリック!個人事業主が還付金を受け取るための確定申告の手順通常の所得税還付では、専用の「還付金申請書」を提出するのではなく、確定申告書を還付申告として提出します。国税庁の「確定申告書等作成コーナー」や会計ソフトを利用すれば、入力した売上、経費、控除、源泉徴収税額などから還付金額を計算できます。還付申告に必要な書類を準備する確定申告書を作成するため、次の資料を準備します。1年間の売上が分かる帳簿、請求書、入金明細必要経費が分かる帳簿、領収書、クレジットカード明細源泉徴収税額が分かる支払明細予定納税額が分かる通知書社会保険料、生命保険料などの控除証明書青色申告決算書または収支内訳書マイナンバーと本人確認書類還付金を受け取る本人名義の口座情報支払調書が手元になくても還付申告は可能です。取引先から本人への支払調書の交付は義務ではないため、毎月の請求書、支払明細、入金額などを基に源泉徴収税額を確認します。帳簿や領収書などは、確定申告書へすべて添付するものではありません。ただし、税務署から確認を求められた場合に説明できるよう、法定期間に従って保管してください。確定申告書を作成・提出して受取口座を指定する資料を準備したら、確定申告書に次の内容を入力します。売上と必要経費青色申告特別控除所得控除・税額控除源泉徴収税額予定納税額還付金の受取口座入力が完了すると、確定申告書の「還付される税金」に金額が表示されます。提出方法は、e-Taxによる電子申告、税務署への持参、郵送などです。還付金を口座振込で受け取る場合は、原則として申告者本人名義の口座を指定します。金融機関名、支店名、口座番号、口座名義に誤りがあると、確認のため還付が遅れることがあります。提出前に必ず確認しましょう。確定申告の全体的な流れや、インボイス登録後の消費税申告について知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。▶︎フリーコンサルのための確定申告ガイド|インボイス制度への対応と高単価案件獲得還付金はいつ振り込まれる?受取時期と確認方法還付金は、確定申告書を提出した直後に振り込まれるわけではありません。税務署が申告書や添付書類を確認した後、指定口座への振込手続きが行われます。e-Taxと書面申告では振込時期が異なる国税庁によると、確定申告期間中に書面で提出した還付申告は、還付までおおむね1か月から1か月半程度かかります。自宅や税理士事務所などからe-Taxで提出した場合は、通常3週間程度で処理されます。(※受取時期や方法は、国税庁の「税金の還付」で確認してください。)ただし、次の場合は通常より時間がかかる可能性があります。申告内容や口座情報に誤りがある必要書類が不足している同じ年分の申告書を複数回提出した書面で提出する資料が別途ある確定申告が集中する時期に提出した還付金を早く受け取りたい場合は、申告内容を早めに整理し、e-Taxで正確に提出することが有効です。還付金の受取方法と振り込まれない場合の確認方法還付金は、主に次の方法で受け取れます。預貯金口座への振込みマイナンバーに登録した公金受取口座への振込みゆうちょ銀行または郵便局の窓口での受取り申告から一定期間が経過しても還付されない場合は、e-TaxソフトのWEB版へログインし、「マイページ」の「還付・納税関係」から処理状況を確認できます。(※詳しい確認手順は、e-Taxの「還付金処理状況確認について」をご確認ください。)処理状況を確認できる目安は、e-Taxによる申告では約2週間後、書面申告では約1か月後です。口座情報の誤りや税務署からの確認事項が表示されている場合は、案内に従って対応してください。処理状況を確認できず、目安の期間を大幅に過ぎている場合は、申告先の税務署へ問い合わせましょう。個人事業主が還付申告するときの注意点還付申告では、源泉徴収税額や予定納税額だけでなく、売上、経費、所得控除も正しく申告する必要があります。還付金を増やす目的で経費や控除を過大に計上すると、後から税額の修正や返還を求められる可能性があります。還付申告には期限がある確定申告書を提出する義務のない人が還付申告を行う場合は、対象年の翌年1月1日から5年間提出できます。例えば、2025年分の還付申告は、2026年1月1日から2030年12月31日まで提出可能です。一方、すでに確定申告書を提出しており、後から税額を多く申告していたことに気付いた場合は、通常の還付申告ではなく「更正の請求」が必要です。更正の請求は、原則として法定申告期限から5年以内に行います。また、青色申告者が純損失の繰戻しによる還付を請求する場合は、原則として赤字が発生した年分の確定申告期限内に手続きしなければなりません。すべての還付手続きが5年間可能というわけではない点に注意しましょう。還付額が多すぎる場合や仕訳をするときの注意点想定より還付金が多い場合は、申告書を提出する前に次の項目を確認してください。売上や雑収入の入力漏れがないか源泉徴収税額を重複して入力していないか必要経費へ私的な支出を含めていないか所得控除を重複して適用していないか予定納税額を正しく入力しているかほかの所得を申告しているか所得税の還付金を事業用口座で受け取った場合、還付金は事業所得の収入にはならないため、一般的には「事業主借」で処理します。ただし、源泉徴収された所得税を「仮払金」などで記帳していた場合は、還付時にその勘定科目を取り崩すことがあります。源泉徴収時の仕訳と整合するように処理しましょう。プライベート口座で受け取った場合は、事業上の仕訳は不要です。一方、還付の処理に時間がかかったことなどにより「還付加算金」が支払われた場合は、通常の所得税還付金とは税務上の扱いが異なります。還付加算金は一種の利子として雑所得の対象になるため、金額を分けて確認してください。税務上の判断が難しい場合や、還付額が不自然に大きい場合は、提出前に税務署や税理士へ相談することが重要です。さいごに個人事業主は、源泉徴収税額や予定納税額が、本来納めるべき所得税額を上回った場合に還付金を受け取れます。還付金の基本的な計算方法は、次のとおりです。源泉徴収税額+予定納税額-本来納めるべき所得税等=還付金額ただし、源泉徴収されているだけで必ず還付になるわけではありません。売上、必要経費、所得控除、税額控除、ほかの所得などを反映した結果、追加納税が必要になる場合もあります。過去に源泉徴収や予定納税をしていたものの、還付申告を行っていない人は、申告可能な期間が残っていないか確認してください。正確な申告に不安がある場合は、税務署や税理士などの専門家へ相談しながら手続きを進めることが大切です。quickflowでは、フリーコンサルタントやIT人材向けの案件紹介に加え、大手コンサル・ITベンダー出身者によるキャリア支援を行っています。現在の案件単価が自分の経験に見合っているか知りたい収入を安定させられる長期案件を探したい報酬の入金までの期間を短くしたいこのような方は、まずはquickflowの案件一覧から自分の市場価値を確認してみましょう。👇下記の案件一覧画像をクリック