SAP運用保守は、稼働後のSAPシステムを安定して使い続けるために、問い合わせ対応や障害対応、設定変更、改善などを担うフェーズです。SAPの運用保守とは?SAPの運用保守は、SAPシステムの本番稼働後に、システムを安定して利用できる状態に保ちながら、利用部門からの問い合わせや障害、業務変更などに対応していく業務です。SAPの導入プロジェクトでは、要件定義や設計、開発、テスト、移行などを経て本番稼働を迎えます。しかし、Go Liveした時点でSAPに関する業務が終わるわけではありません。実際の業務でSAPを使用し始めると、ユーザーからの問い合わせ、ジョブやインターフェースの異常、データ・設定の変更、追加改修など、さまざまな対応が発生します。JFEシステムズが公開しているSAP ERP運用・保守サービスでも、SAPの技術支援や業務運用に関する継続的な支援が運用保守として扱われています。(※詳細はJFEシステムズ「SAP ERP運用・保守サービス」を確認してください。)SAPプロジェクト全体のフェーズをより詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください!どのフェーズから経験すればいいの?~SAPフリーランスとして独立を目指す人のためのフェーズ解説~SAP導入後に行う運用保守の役割SAP運用保守の役割は、単に「システムが止まらないように監視すること」だけではありません。大きく分けると、現在のSAPを安定して使い続けるための対応と、業務やシステムの変化に合わせてSAPを改善する対応があります。例えば、日々の問い合わせや障害への対応は安定稼働を支える業務です。一方、ユーザーから「この処理を変更したい」「新しい業務に対応したい」といった要望が出れば、設定変更や追加開発、テストなどが必要になることもあります。SAP公式のSAP Cloud ALMでも、システムやビジネスプロセス、インテグレーションなどを対象とした監視機能が提供されています。運用保守では、担当領域によってはアプリケーションだけでなく、SAPを取り巻くシステム全体の状態を継続的に確認することも重要です。(※詳細はSAP「SAP Cloud ALM」を確認してください。)SAPの「運用」と「保守」の違いSAP案件では「運用保守」とまとめて呼ばれることが多く、両者の境界は案件によって異なります。一般的には、運用はSAPを日常的に利用するための定常的な作業、保守は障害や変更などに応じてシステムを維持・修正する作業と考えると理解しやすいでしょう。例えば、監視や定期ジョブの確認、ユーザーからの問い合わせ受付などは運用寄りの業務です。一方、障害の原因調査、カスタマイズ変更、アドオン改修などは保守寄りの業務といえます。ただし、実際のプロジェクトでは一人または同じチームが両方を担当することもあります。そのため、求人や案件を見る際は「運用保守」という言葉だけで判断せず、具体的な作業内容を確認することが重要です。SAP運用保守の主な仕事内容SAP運用保守の仕事内容は、担当するモジュールやシステム構成、アプリケーション担当かBASIS担当かなどによって異なります。代表的な業務を大きく分けると、問い合わせ・定常運用、障害対応、変更・改善対応の3つに整理できます。問い合わせ対応・定常運用SAP運用保守では、実際にSAPを利用している業務ユーザーからの問い合わせに対応します。例えば、FIであれば「伝票が登録できない」、MMであれば「購買処理が想定どおり進まない」など、ユーザーから寄せられた事象を確認し、操作の問題なのか、マスタや設定の問題なのか、システム上の不具合なのかを切り分けます。単純な操作方法の説明で解決するケースもあれば、ログやデータ、設定を確認して原因を調査するケースもあります。BASISなどの領域では、システムやジョブの監視、データ管理などを担当する場合もあります。BeeXのSAP BASIS運用保守サービスでも、SAP監視、データ管理、障害対応、運用管理などがサービス内容として整理されています。(※詳細はBeeX「SAP BASIS運用保守サービス」を確認してください。)障害対応・原因調査SAPで障害や不具合が発生した場合は、影響範囲を確認したうえで原因を切り分け、必要な復旧対応を行います。ここで重要なのは、エラーの内容だけを見るのではなく、「どの業務が止まっているのか」「どこまで影響しているのか」まで把握することです。例えば、あるインターフェースが停止していたとしても、その先で出荷や請求などの業務が止まっていれば、復旧の優先度は高くなります。障害対応を経験すると、どのような確認や対応が必要になるのか、復旧にどの程度の時間や人手が必要になるのかを具体的にイメージしやすくなります。こうした経験は、後にリーダーやマネージャーとして工数や優先順位を判断する際にも生かせます。設定変更・改修・改善対応本番稼働後も、SAPの設定や機能が一切変わらないわけではありません。組織変更、業務ルールの変更、ユーザーからの改善要望などに応じて、カスタマイズ変更、データ変更、権限変更、アドオン改修、テストなどを行う場合があります。そのため、SAP運用保守は「決められた作業を繰り返すだけ」の仕事とは限りません。案件によっては、ユーザーから寄せられた課題を整理し、改善案を検討して変更まで進めるなど、導入フェーズに近い動きが求められることもあります。SAP運用保守に必要なスキルSAP運用保守では、SAPの操作方法を知っているだけでは十分ではありません。問い合わせや障害の原因を特定するには、担当モジュールの知識に加えて、その機能が実際の業務でどのように使われているかを理解する必要があります。担当モジュールと業務への理解まず必要になるのが、自分が担当するモジュールに関する知識です。例えばMMであれば、購買依頼から発注、入庫、請求書照合までの流れを理解していることで、「どの処理で問題が起きているのか」を切り分けやすくなります。同じフェーズを経験していても、担当モジュールが変われば扱うデータや業務上の注意点も変わります。例えば、MMの移行を経験すれば、移行フェーズの流れに加えてMMの移行データについて理解を深められます。一方、それだけで他モジュールの移行にも同じように対応できるとは限りません。運用保守でも同様に、「運用保守経験あり」というだけでなく、どのモジュール・業務領域で何を経験したかが重要です。障害調査・コミュニケーションスキル運用保守では、問題の原因を順序立てて切り分ける力も求められます。ユーザーから伝えられる情報だけでは原因が分からないことも多いため、「いつから発生したのか」「誰に発生しているのか」「どの処理までは正常だったのか」などを確認しながら調査範囲を絞ります。また、一人ですべてを解決するとは限りません。アプリケーション、ABAP、BASIS、インフラ、外部システムなど複数の担当者と連携するケースもあります。そのため、技術的・業務的な事象を整理し、ユーザーや他チームに分かる形で共有するコミュニケーション力も重要です。SAP運用保守でよくある課題SAP運用保守では、稼働中のシステムを扱うからこその難しさがあります。特に注意したいのが、業務の属人化と、障害・変更対応の複雑化です。属人化してナレッジが蓄積されない長期間同じSAPシステムを運用していると、「この処理はAさんしか分からない」「この障害は過去にBさんしか対応したことがない」といった属人化が起こることがあります。実際、BeeXもSAP BASIS運用における課題として、運用の属人化や障害時の対応遅延などを挙げています。運用保守では、障害対応の結果や特殊な設定、業務上の例外などをドキュメントとして残し、チーム内で共有できる状態にしておくことが重要です。SAPコンサルタントとして参画する場合も、自分だけが分かる状態を作るのではなく、次回同じ事象が発生したときにチームで再現できる形まで整理することが評価につながります。障害対応・変更対応が複雑になりやすいSAPは基幹業務を支えるため、ひとつの変更が複数の業務や周辺システムへ影響する場合があります。そのため、運用保守では「修正できれば終わり」ではなく、影響範囲を確認し、必要に応じてテストや関係者との調整を行う必要があります。SAP Cloud ALMでも、ビジネスプロセスやアプリケーション、インテグレーションなどを横断して監視する仕組みが用意されています。SAP単体だけを見るのではなく、関連するシステムや業務まで含めて影響範囲を確認する視点が重要です。SAP運用保守を経験するメリット将来的に要件定義などの上流工程を担当したい人にとっても、SAP運用保守を経験する価値はあります。上流工程を全体像を決める「ドラフト」、下流工程をその内容を具体化する「清書」と考えると分かりやすいでしょう。最終的にどのような業務やシステムとして使われるのかを理解していなければ、上流工程でも適切な判断をしにくくなります。上流工程に対する解像度が上がる運用保守を経験すると、本番稼働後にユーザーがどのようにSAPを使い、どのような問い合わせや障害が発生するのかを知ることができます。例えば、運用時に何度も問い合わせが発生した機能を知っていれば、新しいプロジェクトでは「ユーザーにとって分かりにくくないか」「運用時に負担が集中しないか」といった点まで考慮できます。後工程を知っているからこそ、上流工程で何をどこまで決める必要があるのか判断しやすくなる点は、運用保守を経験するメリットの一つです。障害対応やマネジメントに生かせる実際に障害対応を経験していると、問題が発生した際に、調査・切り分け・復旧までどの程度の作業が必要になるのかをイメージしやすくなります。将来的にリーダーやマネージャーとなった際にも、メンバーが抱えている作業の難易度や負荷を理解したうえで、優先順位や工数を判断しやすくなります。また、自分が直接担当していない障害でも、過去の経験から確認すべきポイントを提示したり、必要な担当者を判断したりできれば、プロジェクト内で対応できる範囲も広がります。対応できる案件やフェーズの幅が広がる要件定義だけ、開発だけ、運用保守だけというように経験を限定するよりも、複数のフェーズを経験しておくことで担当できる業務の幅は広がります。例えば、導入プロジェクトからGo Live後の安定化支援まで継続して担当したり、運用保守フェーズで追加改修の要件整理を任されたりするケースがあります。フリーランスとして独立したばかりの時期には、こうした経験を通じて職務経歴書に担当フェーズを増やしていくことも一つのキャリア戦略です。自分の運用保守経験が、実際にどのようなSAP案件で評価されるのかを確認してみると、次に伸ばすべきスキルも見えやすくなります。quickflowでは、SAP領域の案件を掲載しており、得意領域だけでなく今後挑戦したい領域についても相談できます。このような方は、まずはquickflowの案件一覧から自分の市場価値を確認してみましょう。👇下記の案件一覧画像をクリックSAP運用保守を続けるとキャリアはどうなる?「運用保守を続けていると上流工程に進めなくなるのでは」と不安に感じる人もいるでしょう。しかし、重要なのは運用保守を経験したこと自体ではなく、その中でどこまで主体的な経験を積めたかです。問い合わせを決められた担当者へ振り分けるだけなのか、自分で原因を調査して解決するのか、さらに改善案まで提案するのかでは、身につく経験が大きく異なります。NTTデータ グローバルソリューションズでも、運用保守からスタートし、システムや業務への理解を深めながら上流領域へ経験を広げたキャリア例が紹介されています。(※運用保守から上流工程へ経験を広げた事例は、NTTデータ グローバルソリューションズ「下流での経験が、上流での武器になる。」を確認してください。)運用保守経験を次のキャリアに生かす運用保守で得た知識は、要件定義や設計など別のフェーズへ担当範囲を広げる際にも活用できます。特に、実際のユーザー業務、障害が起きやすいポイント、運用負荷の高い設計などを知っていることは、上流工程で要件や設計を検討する際の材料になります。一方、将来的に上流工程を主戦場にしたいのであれば、運用保守だけを長く続けるのではなく、要件定義、設計、移行などへ意識的に担当範囲を広げていくことが重要です。SAPコンサルタントの経験やポジションごとのキャリアを詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください!【独立前に必見!】SAPコンサルのポジション別キャリアガイド一度は導入からGo Live後まで経験するすべてのSAPフェーズを何度も経験する必要はありません。プロジェクト全体の流れを理解したいのであれば、一度は導入からGo Live、その後の運用まで一連の流れを経験するという方法があります。そのうえで、自分が強みにしたいフェーズを重点的に経験すると、全体像と専門性の両方を身につけやすくなります。フェーズの流れを理解する目的であれば、一度経験するだけでも得られるものがあります。一方、「この人なら安心して運用保守を任せられる」と評価されるレベルを目指すのであれば、同じ領域で複数の案件や異なる事象を経験し、対応の引き出しを増やすことが重要です。特にSAPでは、同じ運用保守でも担当モジュールや業務、システム構成によって発生する課題が異なります。そのため、すべてを広く浅く経験し続けるのではなく、一度全体を経験したうえで、自分の得意なモジュールやフェーズを深めるというキャリアの積み方も選択肢になります。SAP運用保守の求人・フリーランス案件SAP運用保守は、企業に所属するSAPコンサルタント・エンジニアだけでなく、フリーランスが参画する案件でも見られる業務領域です。SAP運用保守に関する求人には、SAPコンサルタントやBASIS担当、サービスデリバリーマネージャーなど複数のポジションがあります。NTTデータ グローバルソリューションズの採用情報でも、運用・保守SAPコンサルタントや運用・保守サービスデリバリーマネージャーなどの職種が掲載されています。(※職種例はNTTデータ グローバルソリューションズ「募集職種一覧」を確認してください。)運用保守案件で評価される経験運用保守案件を探す際は、「SAP運用保守を○年経験した」という年数だけではなく、具体的に何を担当したかを整理しておくことが重要です。例えば、次のような内容です。担当したSAPモジュール・製品問い合わせ対応の範囲障害調査・原因切り分けの経験カスタマイズ変更や改修の経験ユーザー・ベンダーとの調整経験改善提案の経験リーダーやメンバー管理の経験同じ「運用保守経験」でも、担当範囲によってアピールできる強みは異なります。フリーランスとして独立を考えている場合も、まずは自分が「どのモジュールで、どのような問題を、自分の判断でどこまで解決してきたか」を棚卸ししてみましょう。SAPフリーランスとして案件を獲得する方法や、案件参画までの流れを詳しく知りたい方はこちらの記事も参考にしてください!SAPフリーコンサルの案件獲得までの流れを解説!SAP運用保守の経験を今後のキャリアに生かそうSAP運用保守では、問い合わせ対応や障害調査、設定変更などを通じて、SAPシステムだけでなく実際のユーザー業務への理解も深められます。運用保守で得た経験は、要件定義・設計などの上流工程やマネジメントへ担当範囲を広げる際にも活用できます。一方で、どの経験を深めるべきかは、現在のモジュールや担当業務、今後目指すキャリアによって異なります。一度は導入からGo Live後までの流れを経験し、そのうえで自分の得意なモジュールやフェーズを深めていくことも、SAPコンサルタントとしてキャリアの幅を広げる方法の一つです。quickflowでは、SAPフリーランス向けに案件紹介や独立・キャリアに関する相談を受け付けています。現在の経験でどのような案件を狙えるのか、今後どの領域を伸ばすべきかを整理したい場合にも利用できます。運用保守経験を生かせる案件を探したい上流工程へキャリアを広げたい自分の経験がフリーランス市場でどう評価されるか知りたいこのような方は、まずは下のボタンから、無料相談にお申し込みください。👇下記の無料相談ボタンをクリック!