この記事では、個人事業主が法人化を検討する所得・売上の目安から、メリット・デメリット、法人化する時期、実際の手続きまで解説します。個人事業主が法人化を検討するタイミング・目安法人化を検討する3つの代表的なタイミングを以下の表にまとめました。※上記は法人化を決める基準ではなく、比較検討を始めるための目安です。※公式情報を元に著者作成それぞれ詳しく見ていきます。所得が800〜900万円前後になったとき所得が増えてきた場合は、個人事業主のまま事業を続ける場合と、法人化した場合の税負担を比較するタイミングです。所得税は5〜45%の超過累進税率で、課税所得が695万円を超える部分には23%、900万円を超える部分には33%の税率が適用されます。(※詳細は国税庁「所得税の税率」を確認してください。)一方、法人には所得税ではなく法人税などが課されます。法人税率は法人の規模や所得などによって異なるため、「法人税率の方が低いから必ず法人化した方が得」と単純に比較することはできません。(※詳細は国税庁「法人税の税率」を確認してください。)法人化すると、自分自身への役員報酬、会社負担分の社会保険料、法人住民税、税理士費用なども考慮する必要があります。そのため、所得800〜900万円前後は「法人化すべきライン」ではなく、個人と法人の手取りをシミュレーションし始める目安として捉えるとよいでしょう。法人化を含め、フリーランスの手取りを最大化する方法をより詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください!▶︎フリーランスの「手取り最大化」と法人化へのロードマップ 【早見表付き】課税売上高が1,000万円を超えたとき課税売上高が1,000万円を超えてきた場合は、消費税の扱いを確認する必要があります。個人事業者は原則として、その年の前々年にあたる基準期間の課税売上高が1,000万円を超えると、消費税の課税事業者となります。つまり、「今年の売上が1,000万円を超えた瞬間に消費税が発生する」という仕組みではありません。ただし、基準期間の課税売上高が1,000万円以下でも、特定期間の課税売上高などによって課税事業者となる場合があります。(※詳細は国税庁「納税義務の免除」を確認してください。)個人事業主が法人化した場合、法人化前の個人と法人化後の法人は、消費税の納税義務を別々の事業者として判定します。新設法人には基準期間がないため原則として免税となる場合がありますが、資本金などによる例外もあります。さらに注意したいのがインボイス制度です。適格請求書発行事業者として登録している場合、基準期間の課税売上高が1,000万円以下であっても、原則として消費税の納税義務は免除されません。BtoB取引が中心となるフリーコンサルタントやITエンジニアの場合、取引先との契約条件によってインボイスへの対応が必要になることもあります。そのため、「法人を新設すれば必ず消費税を免除できる」と考えるのではなく、現在の課税状況やインボイス登録、取引先との関係まで含めて判断することが重要です。事業拡大・資金調達・法人取引を考え始めたとき税金以外にも、法人化を検討するタイミングがあります。たとえば、次のようなケースです。法人との取引を前提とする案件を受注したい金融機関から事業資金を調達したい従業員や業務委託メンバーを増やしたい自分1人のフリーランスから事業会社へ成長させたい将来的な事業承継や売却まで考えている法人は個人とは別の事業主体となるため、会社名義で契約や資産保有などを行えるようになります。特にフリーコンサルタントの場合、「税金が安くなるか」だけでなく、「法人化によって受注できる案件や事業の選択肢が増えるか」も重要な判断材料です。法人化を検討する際は、税負担だけでなく、今後どのような案件を獲得したいかという視点も重要です。現在の経験やスキルでどのような案件を狙えるのか確認しておくと、今後の事業計画を立てやすくなります。まずはquickflowの案件一覧から自分の市場価値を確認してみましょう。👇下記の案件一覧画像をクリック個人事業主と法人の違い個人事業主と法人では、税金だけでなく、社会保険、責任範囲、会計・申告、信用力などさまざまな点が異なります。ちなみに、個人事業主から法人化することを「法人成り」と呼びます。※公式情報を元に著者作成特に重要なのが社会保険です。株式会社などの法人事業所は、事業主のみの場合を含め、原則として健康保険・厚生年金保険の適用事業所となります。1人で会社を設立した場合でも、「従業員がいないから社会保険に入らなくてよい」とは限りません。(※詳細は日本年金機構「適用事業所と被保険者」を確認してください。)法人化を判断するときは、税金だけでなく社会保険料まで含めた手取りで比較しましょう。個人事業主が法人化するメリット税負担を抑えられる可能性がある所得が大きくなるほど所得税率が上がる個人事業主に対し、法人では法人税など別の税体系が適用されます。また、法人から自分自身へ支払う役員報酬についても、一定の要件を満たす給与は法人側で損金に算入できます。ただし、役員給与であれば自由に金額を変更してもすべて損金になるわけではなく、「定期同額給与」など一定の要件があります。(※詳細は国税庁「役員に対する給与」を確認してください。)そのため法人化後は、法人にいくら利益を残すか+ 自分の役員報酬をいくらにするか+ 社会保険料はいくらになるかを全て設計することで初めて、個人事業主との具体的な比較ができます。法人化以外の節税方法についても確認したい方は、こちらの記事も参考にしてください!▶︎【フリーランス税金あれこれシリーズ】個人事業主が知っておくべき節税対策社会的信用が高まり事業を拡大しやすくなる法人化すると、会社名義で契約や資金調達を行えるようになります。個人事業主でも企業との取引や融資は可能ですが、事業を拡大していくにつれて法人格が必要になる場面も考えられます。フリーコンサルタントやITエンジニアの場合も、法人化によって必ず案件単価が上がるわけではありません。しかし、将来的に複数人で案件を受注したり、自社サービスを展開したりする場合には、法人という事業主体を持つメリットが大きくなります。「自分が稼ぐ」段階から「事業として拡大する」段階へ移るタイミングは、法人化を検討する一つのサインです。赤字繰越など税務上の選択肢が増える青色申告をしている個人事業主の場合、事業所得などで生じた一定の純損失は、原則として翌年以後3年間にわたって繰り越すことができます。(※詳細は国税庁「記帳や帳簿等保存・青色申告」を確認してください。)一方、青色申告書を提出している法人では、一定の要件のもと欠損金を10年間繰り越すことができます。(※詳細は国税庁「青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除」を確認してください。)事業への投資額が大きく、年度によって利益が変動する場合は、こうした制度の違いも法人化を検討する材料になります。個人事業主が法人化するデメリット・注意点設立費用・維持費がかかる個人事業主は比較的低コストで事業を開始できますが、法人化には会社設立費用が必要です。設立登記の登録免許税は、株式会社では資本金の額の0.7%で、計算した額が15万円に満たない場合は15万円となります。合同会社も資本金の額の0.7%で、6万円に満たない場合は6万円です。(※詳細は法務省「株式会社の設立手続(発起設立)について」を確認してください。)設立後も、法人の税務申告会計ソフト税理士への依頼社会保険各種変更登記など、個人事業主時代にはなかったコストが発生する可能性があります。法人化による節税額だけでなく、年間の維持費を差し引いた後にメリットが残るかを確認しましょう。社会保険への加入で負担が増える1人法人であっても、法人事業所は原則として健康保険・厚生年金保険の適用対象です。個人事業主時代の国民健康保険・国民年金から社会保険へ切り替わることで、保障内容だけでなく保険料負担も変化します。法人では、役員報酬などを基礎として算定される社会保険料について、会社側の負担も発生します。そのため、税金だけを比較すると法人化が有利に見えても、社会保険料を含めると差が小さくなるケースがあります。繰り返しになりますが、法人化の損得を計算するときは「税金+役員報酬+社会保険料」で比較することが重要です。経理・税務・事務手続きが複雑になる法人化すると、個人のお金と会社のお金をより明確に分けて管理する必要があります。法人税の申告、役員報酬、源泉徴収、社会保険など、個人事業主時代より対応事項も増えます。たとえば役員給与は、一定の要件を満たさなければ法人の損金に算入できません。「売上が増えたから、とりあえず会社を作る」と考えるのではなく、経理・税務を継続して運用できる体制まで考えておく必要があります。法人化するか判断するときのポイント法人化の判断で最も避けたいのは、特定の金額だけを見て決めることです。ここで、個人事業主が法人化すべきか迷った時の判断軸を整理します。※制度上の法人化基準ではなく、フリーランスが検討するときの判断材料として著者が独自に作成したものです。税金だけでなく社会保険料・維持費まで比較するたとえば、年間売上1,200万円のフリーコンサルタントがいたとしても、経費が200万円なのか600万円なのかで所得は大きく変わります。さらに法人化後は、役員報酬の金額によって本人の所得税や社会保険料も変わります。そのため、売上-経費=所得だけを見るのではなく、個人事業主として残る手取り vs 法人利益+役員報酬から最終的に残る手取りを比較しましょう。法人化を具体的に検討する段階では、前年の確定申告書などをもとに、税理士へ税負担のシミュレーションを相談すると判断しやすくなります。一時的な売上増ではなく今後の事業計画で判断する法人化には設立・維持コストがかかるため、今年だけ利益が大きかったという理由で急いで会社を設立すると、翌年に売上が減った際に負担だけが残る可能性があります。たとえばフリーコンサルタントの場合、ケースA:年商900万円・1人で今後も同じ働き方を予定しているこのケースでは、所得や社会保険料などを比較したうえで、個人事業主を継続するのがおすすめです。ケースB:年商1,500万円・法人限定案件への参画予定、将来的にメンバーを増やしたい一方このケースでは、節税以外にも法人化による事業上のメリットが生まれます。つまり、法人化のタイミングは「今年いくら稼いだか」だけではなく、「今後どのような事業を作りたいか」から逆算することが重要です。法人化そのものの税務判断については、税理士などの専門家に相談すべきでしょう。一方で、「今後どのような案件を狙うか」「法人化後にどのようなキャリアを築くか」といった案件・キャリア面については、エージェントへの相談が欠かせません。quickflowでは、フリーランスコンサルタント・IT人材向けに案件紹介や独立後のキャリア相談を行っています。「今の経験で狙える案件を知りたい」「法人化後の働き方や案件選びを整理したい」という方は、まずは下のボタンから無料相談にお申し込みください。👇下記の無料相談ボタンをクリック!法人化するなら何月がいい?設立時期の決め方決算月・繁忙期・資金繰りから設立時期を決める法人化する月に「全員にとって最も得な月」はありません。法人は決算月を設定できるため、法人化する日だけではなく、設立後の決算・納税スケジュールを考えて決めることが重要です。たとえば、フリーコンサルタントが3月末まで大型プロジェクトに参画している場合、プロジェクトの繁忙期と法人設立手続きを重ねると負担が大きくなります。法人化の時期を決める際は、最低限以下の項目を確認しましょう。本業の繁忙期と重ならないか決算業務を行いやすい月か納税時期に十分な資金を確保できるか現在の取引先との契約を切り替えやすいか税金だけでなく、実務上スムーズに個人から法人へ切り替えられる時期を選ぶことがポイントです。消費税・インボイス制度も確認する法人化の時期を検討する際は、消費税とインボイス制度の扱いも確認しましょう。個人事業主と法人では、消費税の納税義務を別々の事業者として判定します。新設法人には基準期間がないため原則として免税となる場合がありますが、資本金や特定期間などによる例外があります。さらに、適格請求書発行事業者として登録している場合は、原則として消費税の免税事業者にはなりません。(※詳細は国税庁「消費税のしくみ」を確認してください。)また、個人事業を廃業して法人化する場合、個人事業者として取得したインボイス登録番号と法人の登録番号は別です。法人番号を有する法人の場合は「T+法人番号13桁」、個人事業者などは「T+法人番号と重複しない13桁の番号」となります。(※詳細は国税庁インボイス制度適格請求書発行事業者公表サイト「登録番号とは」を確認してください。)取引先への請求を途切れさせないためにも、法人設立日だけでなく、インボイス登録や契約名義変更のタイミングを合わせて計画しましょう。個人事業主から法人化する手続き会社設立の基本事項を決めて登記する法人化する場合は、まず法人そのものを設立します。大まかな流れは次のとおりです。株式会社・合同会社など会社形態を決める商号・所在地・事業目的・資本金・役員などを決める定款を作成する資本金を払い込む法務局へ設立登記を申請する税務・社会保険などの手続きを行う株式会社などの設立登記は法務局で行います。(※詳細は法務省「株式会社の設立手続(発起設立)について」を確認してください。)なお、株式会社だからといって必ず取締役会を設置する必要があるわけではありません。 一人株式会社や一人合同会社を設立することも可能で、法務省も一人会社の設立登記について案内しています。(※詳細は法務省「一人会社の設立登記申請は完全オンライン申請がおすすめです!」を確認してください。)設立登記後は、原則として設立登記の日から2か月以内に「法人設立届出書」を所轄税務署へ提出します。青色申告や給与支払などを行う場合は、それぞれ必要な届出も確認しましょう。(※詳細は国税庁「新設法人の届出書類」を確認してください。)個人事業の廃業・資産や契約の引継ぎを行う会社を設立しただけでは、個人事業から法人への切り替えは完了しません。法人化後は、状況に応じて次の対応が必要です。個人事業の廃業手続き法人口座の開設取引先との契約名義変更請求先・振込先の変更PCなど事業用資産の法人への引継ぎ借入金・リースなどの整理社会保険への加入インボイスに関する手続き個人事業主として最後の確定申告個人事業を廃止する場合には、税務上も必要な届出があります。(※詳細は国税庁「個人事業の開業届出・廃業届出等手続」を確認してください。)特にフリーコンサルタントの場合、案件契約の途中で個人から法人へ変更すると、取引先側で契約書や請求情報の変更が必要になる可能性があります。案件開始前や契約更新のタイミングに法人化を合わせるなど、税務だけでなく取引先の事務手続きまで考えてスケジュールを組むとスムーズです。フリーコンサルタントの確定申告やインボイス制度への対応を詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください!▶︎フリーコンサルのための確定申告ガイド|インボイス制度への対応と高単価案件獲得最後に個人事業主が法人化を検討する代表的なタイミングは、所得が800〜900万円前後まで増えたとき、課税売上高が1,000万円を超えてきたとき、事業をさらに拡大したいときです。ただし、この金額を超えれば必ず法人化した方が得になるわけではありません。法人化を判断するときは、①所得・売上、②税金、③社会保険料、④法人の維持費、⑤今後の事業計画をまとめて比較しましょう。quickflowでは、フリーランスコンサルタント・IT人材向けに案件紹介や独立後のキャリア相談を行っています。「今の経験ならどのような案件を狙えるのか知りたい」「法人化も含め、今後の働き方やキャリアを整理したい」という方は、まずは下のボタンから無料相談にお申し込みください。👇下記の無料相談ボタンをクリック!